登入魔力を貯めていた悪魔の手が突然刃物で斬られたように落ちた。
「なにっ?」 すると今度は周囲にいた悪魔達がバタバタと倒れていき、悪魔の心臓部分には深い切り傷があった。 「まさかっ、俺以外の悪魔がほとんど全滅だと!?」 騎士達はいきなりの悪魔の全滅に戸惑ったがそれが誰の仕業かすぐに分かった。 「これは、もしかして…」 「ああ、間違いない。この魔力は、この魔力は我ら騎士団最年少で最強の方、団長 だ!」 この国の団長は歴代初の10代の団長だが他の国ではこういう噂を聞く。 イフリークの騎士団団長の実力はは数で表すと国の騎士5000人の強さに等しく、 戦場では自分は無傷で相手を全滅させる力を持つと言われている。 そのため、今まで相手からダメージを受けたことが一度もないと言われている。 「団長が来たのか!どこだ、どこなんですか!?」 「俺はここだ!」 その声は悪魔の背後から聞こえ、悪魔の方を向いた。 団長の横には団長以外に金髪の少女、ミーナが隣に立っていた。 「あの子は、ミーナじゃないか!?」 「ほんとだ!あの悪魔祓いと一緒じゃないのか?なぜ団長と!?」 騎士達の声が聞こえたミーナは驚きながら。 「えぇー!?カイルってもしかしてエバルフさんが言ってたこの国の団長なの!?」 「そうだよ。俺はこの国の騎士団団長。カイル・エリオンだ。ん?」 カイルはこの状況を見て気づいたことがある。 サージスがいない。 それに気づき、カイルは目の前にいる悪魔に向かって。 「ちょっとそこのマッチョな君?俺の部下のサージスががここに来てたよね?サージスはどこ行ったのかな?」 カイルは顔を笑顔にしながら尋ねた。 「ちょっとカイル君!?今この状況でその笑顔はおかしいよ!?」 「おかしくないだろ?人に物を尋ねる時は相手が答えやすい様に対応しないと相手が怖がっちゃうだろ?」 そう言ってカイルは笑顔のまま悪魔に尋ねた。 「おい、小僧。殺されたいのか?」 「殺す?そーゆー言葉は言わないほうが良いと思うよ?」 「何ぃ?」 「なぜならさー」 シュッーー。 カイルが離れた場所から剣を振ると悪魔の体が縦一直線に斬られた。 「グギャアアァァぁ!!!」 悪魔は血を吹き出しながら地面に転がってジタバタした。 するとカイルはさっきまでの笑顔を消した。 そして鋭い眼光で悪魔を睨みつけ。 「全部自分に返ってくるからだよ?それに、サージスは君が殺したんだろ?だったら話が早い。君が俺に殺すって言った様に、俺が君を殺してやるよ。」 そう言ってカイルは片方だけ持っていた剣ともう1つぶら下げていた剣を腰から抜いた。 カイルは両手に長剣を持つとミーナはその場から離れた場所に移動しようとした。 しかし、カイルは 「離れちゃダメだ!俺の領域にいろ!」 「え、領域?でも離れないと戦えないでしょ?」 「外にいるよりは俺の領域にいた方がいい。大丈夫だ。君は怪我しなくて済むから。」 「え、どういう事よ?そもそも領域って何よ!…って来たわよ!」 血を抑えながら悪魔は立ち上がり、物凄い形相でカイルを睨みつけた。 そして、そのままカイルとミーナの方へ襲ってきた。 「てめえら…仲良く死にやが…」 すると、悪魔がカイルの半径5メートル圏内に入った瞬間。 悪魔は身体中切り刻まれたように切り傷が入った。 グシャシャシャシャシャ!!!!! 「グワァァァァ!!!」 悪魔は切り刻まれたことにより、身体中血まみれになっていた。 「え、何が起こったの?」 「すまないが、今話かけないでくれ。集中してるから。」 カイルはそう言ってミーナの質問を拒んだ。 これに対して疑問に思ったのは騎士団に入りたての騎士達も同じだった。 新人の騎士が先輩の騎士に聞いてみた。 「あの、先輩。団長がさっきあの悪魔に攻撃したのは何かの魔法ですか?」 「ああ、そうだ。あの人は自分の影を一定範囲広げる事ができる。これをあの人が言うところの(領域)だ。」 よく見るとカイルの影は半径5メートルくらいの円状に広がっていた。 「そして、その領域に入った対象の敵を今みたいに剣に触れることなく倒すことができる。この影を操って相手を仕留める剣技を『黒帝剣技』と呼ばれている。」 「黒帝剣技って、あの伝説の剣技じゃないですか!?それじゃあ団長は伝説の神級魔導師なんですか?」 神級魔法とは最上級魔法よりも更に上の位の魔法で、別名『神々の魔力』とも呼ばれている。 その力は最上級魔法とは比べものにならない力を持っている。 「その通りだ。団長は1000人に一人とされる神級魔導師だ。見た目は10代後半の子供だが騎士団の中では敵なしの化け物だ。」ライクとニケルは城の裏側にある人気の無い場所へと移動した。 後ろから尾行していたロゼアは壁に隠れながら、ライクとニケルが話をしているのを覗き込んでいた。 …側から見れば只のストーカーにしか見えない。 壁の向こうではライクから先に声を掛けていた。 「で?どうしたんだよ。さっきも、お前一言も喋らなかったし。」 先程の会話でも、ニケルは浮かない顔をしながらグレンやグロードの話を聞いていた。 その理由は。 「…僕達とグロードさんの関係って、これからどうなるのかなと思って。」 「グロードとの関係?」 何を言ってるのか分からないライクだが、ニケルはそのまま説明を続けた。 「大恩あるグロードさんの事を、僕はずっと亡くした父親の様に思ってた。本当の父親じゃ無い事は分かってる。だけど、まるで親子みたいな今の関係性が僕は好きだったんだ。」 「けど、生き別れた本当の息子であるグレンが戻って来たら、もうそんな関係には戻れないのかなって…。」 ニケルの悩み。それは本当の息子であるグレンが戻ってきた以上、自分達はグロードの息子の代わりにはなれないという事である。 また今までの関係性も変わってしまい、もうグロードに相手にされないのでは無いかという不安もあった。 「勿論、グレンと再会出来た事は僕も嬉しいけど。…やっぱり良いな。本当の親が生きてるのって。」 月の民殲滅戦で両親を亡くしてるライクとニケル。特にニケルは子供の頃は甘えん坊であった為、親への未練はライクよりも強い。 親の居ない2人にとってグロードは父親同然。しかし、本当の父親になる事は出来ない。 そう思うとニケルは、少し寂しく感じていた。 それに対してライクは。 「ニケル…お前の言う様に、あいつは俺達の父親じゃねえし、俺達があいつの息子代わりになる事も出来ねえ。」 「……」 「でもよぉ、俺達とグロードとの関係性は何も変わらないと思うぜ。」 「…え?」 落ち込み俯いてたニケルはライクの顔を見た。 「俺もあいつの事は父親みたいに思ってたけど、どっちかと言えば師匠に近い感じだな。それに、あいつは面倒見が良くて、いつも丁寧に俺達の修行に付き合ってくれた。」 「優しい奴だからさ、例え息子が居ようと俺達との師弟関係まで変わる事はねえよ。」 「ライク…
魔導兵器ラウスを倒した事と、北の軍事兵器もグロードが破壊した事により、北の大国が今後攻撃してくる事は無いだろう。北の大国は多くの軍人と軍事兵器を失った事により、いずれ国の財政が崩れ破綻に追い込まれる事となる。戦う力を失った北の大国ウンディーネは結果的に敗戦国となり、これにより東北魔導大戦は事実上終結する事になる。しかし東の大国も無傷という訳にはいかず、今回の魔導兵器ラウスとの戦闘によって沢山の死傷者が出ていた。それだけではない。東の大国の主戦力が戦っている間、手薄になった城内にて更なる事件が起こってしまう。ノーム王の暗殺。戦いが終わった後、城内へ行くとそこは戦場と同じくらい凄惨な状況となっていた。医療班の人も殆どが殺されており、警備の者達に関しては、肉体が残っていれば運が良かったと思えるくらいバラバラに殺されていた。一体誰が実行したのかは不明。しかし、こんな事をするのは1人しか居ないとグロードは気付いていた。「…ベリエル!」見たところ胸部を刺殺(しさつ)されて殺されている様に見えるが、医療知識が豊富なグロードはノーム王の身体を少し触れただけで他の殺害方法で殺されたのだと判断する。「…内臓が全て潰されている。まるで身体の中をかき混ぜられたかの様に……許せない。」あまりにも残酷な殺し方をされている為、グロードは沸々と怒りを覚えた。この場には他にグレン、ミーナ、エミル、ライク、ニケル、フィナ、ネル、そして八握剣(やつかのつるぎ)のギンジが居た。カイルとロゼアとアルバスは意識を取り戻したが、戦いで受けたダメージが大きく、今は休んでいる。他の八握剣(やつかのつるぎ)も同様に、命に別状は無いが大掛かりな治療が必要な状態である為、カイル達同様にこの場には居なかった。ノーム王が殺されている姿を見て先に悲しんだのは、当然八握剣(やつかのつるぎ)のリーダーであるギンジであった。「ノーム王…くっ…何で、こんな事に!」ギンジは両手を握りしめ、悔しさと悲しみで顔を横に向きながら涙を流していた。王の懐刀である八握剣。そのリーダーともあろう者が他のメンバーを救えず、更には王の命さえも守る事が出来ず、ノコノコと生き残ってしまった。ーー俺のせいで…役立たずにも程がある!しかし、それに対してミーナが。「ギンジさん。自分のせいだなんて思わないで下さい。皆んな
そして更に4年後。ラウスは18歳になり、ルーファスは9歳となる。ラウスは高校3年の学年となり、全ての成績において優秀な成績を収めていた。幼い頃から教えられた事は殆ど完璧にこなすその姿を見て、いつしかラウスは神童と呼ばれ将来を期待される様になる。しかし、ラウスは魔法を仕事にする道は選ばずそのまま農作業を営み続ける道を選んだ。当然教師はラウスを説得するもキッパリと断った。自分の将来の夢よりも、ルーファスの側にずっと居る事の方が大事だったからである。こうして学生の頃はそれなりに有名だったラウスは、突如として公の場から姿を消したのだ。一方、ルーファスもラウス同様に成績が良かった。ラウスが合間を縫って勉強を教えているのもあるが、どうやらルーファスも少し教えればすぐ覚える事が出来るのだろう。「(流石は俺の弟だな。)」勉強を見ていたラウスは心の中でルーファスを誉めていた。ある日、ルーファスはこの家に元々住んでいた老夫婦の写真が飾ってある仏壇を見て質問してきた。「兄さん。この人達って、僕達とはどういう関係なの?」あの頃、まだ赤ん坊だったルーファスはこの家に元々住んでいた老夫婦の存在を知らない。「この人達はね、俺達の親みたいな人だよ。本当の親じゃ無いけど、親のいない俺達の面倒を見てくれた人だ。」亡くなった老夫婦の事をラウスは自分の親だと思っており、ラウスにとっては生きていく術を教えてくれた恩師でもあった。「そーなんだ。…じゃあ、僕達の本当のお父さんとお母さんは?」1番聞かれたく無い質問をルーファスは悪気なく聞いてくる。当然である。ルーファスは親の事を何も知らない為、本当の親が気になるのは当然の事。…そっか、あの時お婆ちゃんはこんな気持ちだったんだ。そりゃ、言いたく無いよね。ラウスはルーファスに聞かれた事により、あの時のお婆ちゃんの気持ちが少し分かった。あの時から親の事はあまり思い出さない様に生きてきたラウス。正直、あまり親の事を聞かれても何て言ったら良いのか分からなかった。只、ラウス自身が抱いてる気持ちとして言った。「…ロクでも無い人達だよ。父親は俺と母親を置いて出て行き、残された母親も親の責任を放棄して出て行った。」まだ子供に言うべき事では無いのだろうが、ついつい自分の感情任せに言ってしまったラウス。「そうなんだ。…でも僕、少し会
お母さん…何で帰って来ないんだよぉ…。俺1人でどうしたら良いの?どれだけ待っても帰って来ない母親のヒスイ。既に半日以上待っていたのだが帰って来る気配が無い。ラウス自身、半日以上何も食べていない為、空腹が限界を通り越していた。「おぎゃー!!」泣き叫ぶ弟のルーファス。生後3ヶ月の赤ん坊。お腹も空くし、オムツもしてるから替えてあげないといけない。その他にも、身体を清潔にしないといけない。…どうすれば…。ラウスは寝室で泣いているルーファスの所へ行き、様子を見た。「おぎゃー!おぎゃー!」「凄く泣いてる…こんな時、お母さんどうしてたっけ?」ラウスは普段、母親がどうやってルーファスの世話をしていたのか思い出していた。そしてヒスイが何をしていたのか思い出したラウス。「…まずは、オムツかご飯か。どっちかだけど…嫌だなぁ、オムツの匂いを嗅ぐのは…」それでも我慢してオムツの匂いを嗅ぐラウス。「…多分こっちじゃ無いか。じゃあミルク作らないと。」ラウスは台所にルーファス用のミルクが保管されている所を覚えていた為、そこに行ってミルク粉と哺乳瓶を取り出す。「えっと…先にお湯を温めるんだっけ?」初めての事でどうすれば良いか分からないラウス。しかし、取り扱い説明書があったので、それを見ながら何とか作って哺乳瓶に入れる事が出来た。「よし!後は水で冷まして…よし!」人肌まで冷まし、ラウスはそれをルーファスに飲ませる為、ベッドから起こした。「おーよしよし!ミルクだよ〜。」ヒスイが言ってた様に真似しながら、ルーファスにミルクを飲ませてあげるラウス。ルーファスは勢いよくミルクを飲んでおり、よっぽどお腹が空いていたのが見て分かる。半日、何も食べなければ大人でもお腹が空くに決まってる。「俺も何か食べないと…。」そう言ってラウスは戸棚にある非常食を取り出し、空腹を埋める為にそれらをお腹に詰め込んだ。見たところ、非常食やミルクの量から数日は持つだろうと判断した。しかし、この食料が無くなったらどうしようかと。ラウスはそれが恐怖で堪らなかった。「どうすれば…後、お金だけど。お母さんの貯金でどれだけ過ごせるのか…。」勝手にお金を使う事に抵抗感があるも、生きる為には仕方ないとヒスイが管理してる通帳を確認する。子供では見た事の無い数字に驚くラウスであったが、実際の
真っ暗な暗闇の中。1人の女性が下を向きながら何かを覗き込んで泣いていた。「…ラウス……ルーファス……どうして、こんな事に…。」その女性はヒスイであった。ここは死後の世界であり、この暗闇の空間は死後の世界へ行く前の道。死後の狭間である。ヒスイは死後の世界へは行かず、死後の狭間にある暗闇の空間で家族を見守りながら待ち続けていたのだ。そして現世を見ながら自身の息子達が戦う姿を見て涙を流していた。すると後ろから。「…2人が戦っているのか?」その声の主はヒスイの父親であり、グレンに龍技の真髄を教えた竜の民のドグマであった。後ろからドグマに言われたヒスイは、涙を流しながら振り返る。「…お父さん。」「ヒスイ。…お前も辛いのは分かるが、今の俺達には見守る事しか出来ない。」そしてヒスイの隣に座り、現世で戦うグレン(ルーファス)とラウス。2人の戦いを覗き込む。「信じるしか無い。グレン…いや、ルーファスの事を。そして、あいつの強さを。…きっとあいつが兄を救ってくれる筈だ。」ヒスイはグレン(ルーファス)が生後3ヶ月の時にこの世を去った。ドグマもヒスイが家を出てから、自分に孫が居る事も知らずに30年間虚しく過ごしてきた。しかし、その孫であるグレン(ルーファス)は偶然にもヒスイの父であるドグマと出会い、龍技の真髄を教えてくれた。運命が知らない内に引き合わせてくれたのだ。そして今、ドグマに教えられた龍技の真髄によりグレンは、魔導兵器となり殺戮の呪縛に囚われた兄ラウスを救う為に戦っている。自分の弟子であり、孫でもあるグレンをドグマは信じていた。「(グレン。お前の生き様を、今こそ見せてくれ。)」ドグマの墓前で言ったグレンの誓いに対し、心の中で返答した。信じる事しか出来ないヒスイとドグマは、ラウスとルーファスの行く末が少しでも救われる様に、両手を合わせて祈る。あの世でヒスイとドグマが見守る中、現世ではグレンとラウスの死闘が繰り広げられている。戮力体竜変(りくりょくたいりゅうへん)によって竜人化したグレンは先程とは違い、身体機能が大幅に強化される。自然魔力を体内に取り込む戮力体竜変。それにより身体に現れた竜の鱗は鋼をも上回る強度を誇る。その拳でラウスの胸部を殴る。バコォォォン!!!グレンの拳により、ラウスの硬い胸部は拳大の大きさに凹んだ。グレ
ミーナ達はネルの空間移動でカイルやエミルの救出に向かっていた。エミルはアルバスとロゼアを氷で作った台車に乗せて運んでいたが、その途中で見つけられる。意識を失っていたアルバスとロゼアはミーナの光の回復魔法によって意識を取り戻した。「あれ、ここは…。」目を覚ましたロゼアはゆっくりと目を開ける。「お、気が付いたか!大丈夫か!?」視界に入ってきたライクは心配そうに声を掛け、その声で徐々に意識がハッキリしてきたロゼア。「え…何で…?ライク?」「ああ。俺達は丁度さっき戻ってきた所だ。大丈夫か?」「…心配、してくれてるの?」今まで北の大国では心配される事の無かったロゼア。半分信じられないといった感じでライクに聞いた。「ああ。お前も俺達の代わりに戦ってくれてたんだろ?俺達が不在の中、良くやってくれたぜ。本当に感謝してる!」ライクは笑顔でロゼアに言うと、ロゼアは嬉しさで左目からジワッと涙が溢れてきた。ライクの笑顔を見れて良かったと、安心していたのだ。ネルも同様に、目を覚ましたアルバスに一言声を掛ける。「…僕との約束、ちゃんと守ってくれたね。」「…ごめん。倒す事は出来なかった。」「仕方ない。後はあの男(グレン)に任せよう。」短い会話ではあるものの、ネルは約束を守って戦ってくれたアルバスに感謝した。そして次はカイルの所にも空間移動した。転移した場所でカイルはボロボロの状態で倒れていた。ミーナとニケル。2人の回復魔法を使ってようやく意識を取り戻したカイル。普段タフなカイルであるが、意識を取り戻してもその声はか細く弱々しかった。「…みんな…帰ってたのか?…」「カイル君!エミル、カイル君が目を覚ました!」意識が戻った事を確認したミーナは慌ててエミルを呼んだ。エミルも慌てながらカイルの顔に近づいた。「カイル!」「エミル…良かった…無事だったのか…。」「馬鹿!いつもいつも!自分の事を後回しにして!本当に馬鹿!」ボロボロと涙を流しながらカイルに対して言うエミル。それに対してカイルは一言。「…ごめんな。」そうエミルに言うと、エミルは更に号泣しながらカイルの胸元で泣きじゃくった。「カイル君。連絡してくれてありがとう。今ね、グレンが戦いに行ってるの。」「グレン…そうか。なら、安心だな。」そう言うとカイルは安心した様に目を閉じて眠った
時は少し遡り、場面はミーナとイフリークの国民達に変わる。現在、彼女らはティラーデザートとは別の場所で窮地に立たされていた。大量の悪魔達が周囲を取り囲み、エミルと騎士団の人達が応戦している。それを何もできないまま只々見ているだけのミーナとイフリークの国民達。国民の中には、騎士達が守らず心臓を取られてしまう者もいた。何故、この様な事になったのか。どうしてティラーデザートから離れた場所にいるのか。現在に至るまで更に30分程、時間を遡る。シルフを目指し、猛暑の中を歩き続けるイフリークの国民達は途中で大きなクレーターを発見した。「何だ、この大きなクレーターは。隕石でも落ちたのか?」「
この時の俺はどんな人だったのか、今でも鮮明に覚えている。しかし、どうしても思い出せない事が1つある。自分の本当の名前だ。名前は悪魔祓いになったと同時に捨てたからだ。今も過去の記憶は覚えてても、自分の名前に関する記憶だけはどうしても思い出せない。覚えているのは、楽しかった日常が一夜にして地獄に変わってしまった事。そして…あの時俺を逃してくれた俺の兄の最後を、俺は今でも覚えている。11年前ーキュアリーハート。それは(癒しの心)という意味を込められた平和の国。この国は東西南北にある四大国の中心に位置している。四大国に比べて経済力があるとか、規模が特別大きいなどそういった事はなく
「月の民殲滅は確かにシルフの国王が提案し、様々な国の魔道士達を招集させて殲滅していく、というのが一般的に知られている事です。」 「はい、俺もそういう風に聞きました。」 「でも本当は違うの。シルフの国王は元々平和主義を心掛けていた心の優しい人で当時も月の民殲滅には反対していたのです。けど、あの男が来てからシルフの国王は変わりました。」 「それは、さっき言っていた思考を操る魔法か?」 フィナの口ぶりで何を言いたいのか察したグレンが口を挟んだ。 「はい。12年前に突然やって来たハイド・スペクターが原因だと思います。彼は何故なのか分かりませんが会った当初から国王に気に入られ、その日
その頃、ミーナ達はグレンとカイルが乗った馬車と離れてしまい、現在は残った人達を騎士団達は馬車の外に集めさせた。しかし、集められた一般の人達は数日前の事件から現在まで散々な目に遭っている為不満が高まっているのか騎士団の人達に文句を言っていた。「どういう事なんだよ!馬車が無くてどうやって移動するんだ!」「お前ら騎士団だろ!俺たち今物凄く困ってるの見てわかんねーのかよ!」「そうよ!私達はこれからどーなるのよ!」「何とかしろ!騎士団だろ!」口々に罵声を飛ばす一般の人達。無理もない。つい数日前までは平和に過ごしていたのだ。急にこんな事が続けば誰だって普通じゃいられなくなる。しかし、一般







